ひさしぶりに日本語で書いてみる.
昨日,アメリカ人女性が,近々松下政経塾生相手に行なう日本語のスピーチ原稿をチェックする機会に恵まれた.彼女の勤務先近くのタイ料理で食事をしながら(高かったけど,奢ってもらいました)というインフォーマルな形で行なわれた.彼女は日本語がわりとうまいけど,ネイティヴレヴェルではないので,しょっちゅう日本語と英語のスウィッチを切り替える変な会話だった.
"What are you doing tonight?" "Well, I have a date."
もっとも,顕著だったのは,日本語と英語の時制の違いである.日本人もアメリカ人も「・・・ている」(日本語教師は「テイル」形とか云ったりするらしい)というのが,英語の現在進行形(be -ing)とほぼ同じと考えている.ただ,両者はだいぶ違う.
まず,覚えてほしいルールは,「英語の現在進行形は未来を表わす用法があるが,その場合,日本語では普通の現在形を使うことがほとんどである」ということ.
What are you doing tonight?
は,What are you going to do tonight? とほとんど同じ意味である.これを「夜,何しているの?」というのは少しヘンで,「きょうは,夜,何するの?」ぐらいが自然である.
もうひとつ例をあげる.シカゴの地下鉄もドアが閉まる前に,
The doors are closing.
I used a train at Netherlands too. But, I didn't understand its announcement because it was said in Dutch.
というアナウンスがあった.この場合,進行形は極めて近く起こる動作に使われている.これは,日本語ではご存知の通り,「ドアが閉まります」と云わなければならない.これを,「ドアが閉まっています」というと,英語だと,
The doors is closed.
だ.この場合の「・・・ている」は,動作の完了を表わしているような気もするが,英文の方を検討してみればわかるように状態を表わしてもいる.ちなみに,
The doors have (already) closed.
とは,文法的には間違っていないが,たぶん云わないと思うからだ.このように,「・・・ている」は英語の現在進行形,現在完了形,受動形にもなりうるという難しい問題をはらんでいる.
ちなみに,最初,ぼくは,明確に,「日本語の『・・・ている』はまず未来を表わさない」と云いきりたかったのだが,よく考えると,
「来年は,ぼくはハーヴァード(大学)のキャンパスで勉強していると思うけどね」
のように,「未来」がいつかが明示されているときには使えるようである.ちなみに,英語ではこういうときに未来進行形というのか,will be -ing という形を使うことができる.
I will be studying at Harvard next year.
この,will be -ing はどう使うか,実感をともなってわからなかったのだが,ある高校の新人研修会で,新しい学期が始まったら,教える科目を云う時に,
I'll be teaching math.
のように,皆が云うのを聞いたので,「ああそうか,まだ,新学期は始まってないけど,自分が教えているところを想像しているからこういう風に使うんだ」と思ったものである.もちろん,これを「数学を教えています」のように云うのはヘンである.ただ,「新学期には,数学を教えていることになるでしょうね」ぐらいだとそれほどおかしくはない.
というわけで,「・・・ている」という日本語表現はものすごい曲者である.で,いままでの説明はぼくが勝手に書いたもので,文法書などは特に見ていない.英語教師や日本語教師の読者がこの説明を勝手に利用されても結構だが,学問的に裏づけがないとかの責任は負いかねる.また,もっと優れた説明があれば,勉強したいので,メイルをしたり,コメントをつけてくれれば幸いです.
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